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ネット作家・宵トマトの多彩な世界をご紹介します


by rhizome_1
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空の饗宴(22)

例えば、国家社会主義者が戦争を策動するのは、国家という価値を信じているからだ。彼らは、<私>という価値よりも、<公>の価値を優先させる。
その結果として、国家のために、生命を散らし、殉じた人々を美化し、褒め称える。
前世紀、<ドイツェ帝国>に現れた<アドルフ>という独裁者は、民族浄化を唱え、優生政策を推し進め、ついには<ユダ民族>の殲滅を企てた。<アドルフ>によると、<ユダ民族>よりも<ドイツェ民族>が優れているのは、<ドイツェ民族>は国家という美徳のために、自らの生命を絶つことができることでもわかるという。
この類いの人物は、今世紀の<ニッポン国>にも存在する。
<ゴーマニスト>を自称する或るデマゴーグは、先の世界大戦で、<公>のために<私>の生命を犠牲にした特攻隊員を褒め称え、<ニッポン民族>の優秀さは、エゴイスティックな私心を超え、全体のために殉じる高度な倫理性によって証明されるとしている。
現在の<ニッポン国>の権力の中心にいる<KOIZUMI>もまた、自身が世界を統べるものに生成変化することに、陶酔するタイプの人間である。
<アドルフ>の場合、自身の組織した秘密警察によって、<ユダ民族>を問答無用で逮捕し、ガスかまどの中で青酸ガスを吸わせ、抹殺することに、甘美な喜びを感じていた。
<KOIZUMI>の場合も、自身の組織した刑殺によって、自身の敵対者や、不要と認めた者を、超法規的に逮捕し、法的な適正手続きなしに、口を塞ぐことに、非常な誇りを感じていた。
彼らは、自身の殺人行為を<善>であると確信し、自身の虐殺行為を<実践理性>に基づく<倫理的行為>であると考えていた。彼らは、自身の思考を<完全>であると考えていたから、自身の思考を疑うことをしなかったし、<疑問>を投げかけてくる他者は、ことごとく<抹消すべき他者>として認知した。
だが、私が世界を終わらせたいのは、<国家>のためでもないし、ましてや死んでから久しい<神>のためでもない。
私は<虚無>のために、世界を破滅に陥らせたいのだ。
私に言わせれば、<アドルフ>も<KOIZUMI>も、まだまだ甘い。彼らは守るものがあるだけ弱いのだ。
私は、世の中のありとあらゆる<美徳>を侮蔑している。<美徳>などというものは、弱者が強者から身を護るためにつくったフィクションに過ぎず、そこには弱者の強者へのルサンチマンが隠されていると考える。
国家社会主義者、要するに全体主義者の<国家に殉じるという美徳>も、魔瑠苦棲主義者の考える<歴史的使命に殉じるという美徳>も、キリスト教徒の考える<神に殉じるという美徳>も、ことごとく現実世界に生きる能力のない弱者が捏造したフィクションに過ぎないと考える。
私は、一切の総破壊の果てに、何かを残そうとは考えない。
<国家>も<神>も……<畜群道徳>など糞食らえだ!
手始めに<ニッポン国>を、暗黒に落とす!
<ゾンビ戦隊デンジャラス>と<ニコラ・テスラの装置>を使って、龍脈を破壊し、大地の生命を奪う!
<くらやみ男爵>の計画は、着々と進行しつつあった。
by rhizome_1 | 2004-10-06 10:26 | 創作