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ネット作家・宵トマトの多彩な世界をご紹介します


by rhizome_1
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空の饗宴(26)

「ふっ。」
<sion>は、緊張感をほぐすために、息を吐いた。一体、なにを考えているというのか。強敵を目の前に、これは命取りではないか。
いま一瞬、よぎった妄想は、この世界が別の作者の手になるもので、自分が二次元に書かれた小説の中の存在のようなものではないか、ということだ。この世界を生きるものが三次元の立体的存在だとすると、三次元の立体的存在が書いた小説の中のキャラクターは二次元の平面的存在である。それと同じように、四次元以上の存在が描いた世界が、この三次元世界なのではないか、ちょうど三次元の世界の中で二次元の平面が立体の切り口であるように、この世界は四次元の切り口として存在しているのではないか、ということだ。
「<sion>、いいか。俺たち、ゾンビ戦隊デンジャラスが、キサマの相手だ。覚悟しろ。」
黒いマントに、黒のシャツに黒のタイツ、全身黒づくめの男の声で、我に変える。
黒服の男以外に、赤、黄、紫、そして虹色のカラフルな衣装を着た奇妙な連中が並んでいる。
そして、おもむろに唄い始めた。なんなんだ、こいつら。

「ゾンビ戦隊デンジャラスのテーマ」
I.(セリフ デンジャラス・ブラック参上!)
[ブラック 独唱]
俺はゾンビだ
不死身の体
正義の味方を倒すため
今日も戦う ゾンビ戦隊デンジャラス
悪の聖書(バイブル) 逆回転で再生だ
[全員で]
GO!GO!ゾンビだ
いつでもゾンビは蘇る
GO!GO!ゾンビだ
ゾンビ戦隊デンジャラス
II. (セリフ デンジャラス・レッド参上!)
[レッド独唱]
私はゾンビよ
永遠の女神
正義の味方を誘惑し
堕落させるわ ゾンビ戦隊デンジャラス
悪の堕天使 私のことだわ
[全員で]
GO!GO!ゾンビだ
いつでもゾンビは蘇る
GO!GO!ゾンビだ
ゾンビ戦隊デンジャラス
III.(セリフ デンジャラス・イエロー参上!)
[イエロー独唱]
私はゾンビだ
不眠の戦士
正義の味方を攻略し
実績あげるぞ ゾンビ戦隊デンジャラス
悪のマニュアル 私が立案
[全員で]
GO!GO!ゾンビだ
いつでもゾンビは蘇る
GO!GO!ゾンビだ
ゾンビ戦隊デンジャラス
IV.(セリフ デンジャラス・パープル参上!)
[パープル 独唱]
アタシはゾンビよ
不敵の微笑
正義の味方をイカレさせ
毒牙にかけるの ゾンビ戦隊デンジャラス
悪の美学 アタシだけが知っている
[全員で]
GO!GO!ゾンビだ
いつでもゾンビは蘇る
GO!GO!ゾンビだ
ゾンビ戦隊デンジャラス
V.(セリフ デンジャラス・マルチカラー参上!)
[マルチカラー 独唱]
ワシはゾンビじゃ
欲張りじゃ
悪の帝国うち建てて
栄華を極める ゾンビ戦隊デンジャラス
悪の愉しみ ワシの脳を刺激する
[全員で]
GO!GO!ゾンビだ
いつでもゾンビは蘇る
GO!GO!ゾンビだ
ゾンビ戦隊デンジャラス

ああっ、頭が割れそうだ。くだらない。なんて馬鹿げた奴らだ。
しかし、見くびるのは早すぎた。
「これを受けてみろ。デンジャラス亜空間Moment movement!」
デンジャラス・ブラックが声をかけると、<sion>を取り囲んだブラック・レッド・イエロー・パープル・マルチカラーの手のひらから光線が発射され、光のリングが<sion>の周りに形成されてゆく。その光のリングは、徐々に狭まってゆく。
いけない。逃げられない。
光のリングが、ついに<sion>に触れ、<sion>は空間が捻じ曲がるような感覚を覚えた。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくるしししししししししししししししいいいいいいいいいいいいいいっどおなってるるるるるるるるるるるるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
世界が大きく歪み、周りが光の線になった。線のように見えるのは、周りが変化しているのではない、自分が、<sion>自身が高速度でどこかに移動しているからだ。やがて世界は闇になり、<sion>は精神が押しつぶされるような感覚を覚えた。それは、完全な死、時間の停止した世界であった。
だが、それは一瞬のことで、そこを定点として、生の世界とはさかさまの世界に逆移動を始めた。
なにぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉどどどどどぅなってるののののののののののののぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
しばらく、息詰まるような世界が続いたが、やがて周りの光の線が短くなり、<sion>の身体が再び輪郭を持ち始めた。
だが、ここはどこだろう。
周りにはなにもない。樹も、建物も、工場も、電柱も、土さえもない。
赤紫の丸い世界が広がるばかりである。
そして、目の前にはゾンビ戦隊デンジャラスの五人組。
「ここが、どこか教えてやろう。ここは亜空間。ここならば、想い存分、戦える。この空間は、完全な閉鎖系だから、闘いが終わるまで、この空間から出ることはできない。また、遮蔽物はないから、われわれの霊力から身をかわすことも不可能だ。<sion>、ここはお前の墓場だ。年貢の納め時だと覚悟するんだ。」
リーダーらしきデンジャラス・ブラックが言った。

※ゾンビ戦隊デンジャラスのテーマは、はらぴょん様の以下のサイトに掲載されていたものです。
http://d.hatena.ne.jp/dzogchen/20041124#p2
この小説への転載にあたっては、はらぴょん様のご快諾を得ました。はらぴょん様、ありがとうございました。この場を借りて、お礼申し上げます。なお、ゾンビ戦隊デンジャラスのテーマの音楽は、以下のサイトで聴くことができます。
[ハーモニーフィールド]
http://goro4259.web.infoseek.co.jp/korabo.htm
by rhizome_1 | 2004-11-29 20:48 | 創作