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ネット作家・宵トマトの多彩な世界をご紹介します


by rhizome_1
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「予告! 投稿サイト“百円文庫”から生まれた秀作  杉澤鷹里『射玉行』9/26発売予定」との文字が、
http://www.dbook.co.jp/spacetown/zero-books/index.jsp
に見られます。
神保町ゼロ丁目書店より、電子書籍として発売されるのです。
http://www.zero-books.com/top.html

[杉澤鷹里さんの略歴]
創作系掲示板「破壊者の幻想譜 http://www4.rocketbbs.com/141/ouro.html 」主宰。
HP「青都探 http://www.geocities.jp/sugisawathakali/index_blue.htm 」管理人。
# by rhizome_1 | 2005-08-31 20:51 | エッセイ
rhizome_1@excite.co.jp
# by rhizome_1 | 2005-07-22 21:19 | メール

空の饗宴(31)

「うまくいったようですな。我らの元に敵として攻め入った者を、うまく洗脳して、逆に我らの敵に対する駒にしてしまうとは。恐れ入りました。」
<刑殺庁長官>は、深々と<KOIZUMI>に頭を下げた。
「なぁに。なんてったって<KOIZUMI>だからな。趣味の将棋が、実戦にも役立っただけのこと。敵の<歩>を奪い取り、逆にこちらの駒として<歩>を打っただけのこと。敵の陣地に入るなり、<成金>と化したというわけだ。」
<KOIZUMI>は、「和」と書かれた扇子を扇ぎながら、上機嫌の笑みを浮かべた。
「あの娘は、<sion>の双子の姉で、白魔術の系統に属する<狭霧一族>の出身だ。両親は、黒魔術の系統に属する<黒猫一族>や、<大ニッポン帝国>という新しい秩序を目指すわれわれとの闘争に明け暮れていた。<狭霧しをん>という名前は、<ニッポン>の住民基本台帳には登録されていなかった。登録されていたのは、<狭霧sion>だけだった。つまり、<狭霧しをん>は、ID番号を持たない人間、存在してはならない人間だった。わが<ニッポン>において、ID番号を持たない人間とは、<存在論的アナーキスト>であり、国家の平安を脅かす危険分子である。あの両親は、<狭霧sion>のいざというときの代わりのカードとして、<狭霧しをん>を用意した。<狭霧しをん>は、実の父親の従兄弟のもとで、育てられた。<狭霧しをん>には、その従兄弟を十九歳になるまで実の父親だと信じて育った。十九歳の時、<狭霧しをん>は育ての親から、実際の親は誰かと言うことを教えられた。そして<狭霧一族>が、いかなる闘争を繰り広げていたのかということも、初めて知らされた。<狭霧しをん>が、わけわれの元に攻め入ったのは、両親の復讐のためであった。新しい秩序を目指すわれわれにとって、<狭霧一族>も、<黒猫一族>も、敵であった。なぜなら、白魔術にせよ、黒魔術にせよ、人間の精神を目覚めさせてしまうからだ。われわれの目指す未来の秩序を実現させるためには、人間が目覚めるなどということはあってはならなかった。<狭霧一族>もまた、新しい世界を志向していたが、それはコスモスと呼ばれるものであり、宇宙と生命の鼓動を調和的に一致させることを理想としていた。一方、われわれの目指す世界は、法的な拘束によって成り立つノモスであり、その秩序の中に超越的なものはあってはならなかった。<黒猫一族>は、カオスを目指していたが、これはコスモスを志向する<狭霧一族>にとっても、ノモスを目指すわれわれにとっても、方向性を異にしていた。<狭霧しをん>の実の両親は、自動車の転落事故で、同時にこの世を去ったが、この事故には勿論、仕掛けが施されていた。」
「仕掛けが施されていることを知っているということは、犯人は<総理>なのですね。」
<刑殺庁長官>は、<KOIZUMI>に尋ねた。
「うひょひょひょ。」
<KOIZUMI>は、すばらしく上機嫌である。
「だがね。復讐のために攻め入った<狭霧しをん>を確保したわれわれは、<狭霧しをん>を、催眠状態にして、次のことを吹き込んだのだよ。君の実の両親を謀殺したのは、魔術師勢力なのだよ、と。<黒猫一族>と<狭霧sion>が、君の実の両親を殺したのだよ、とね。そして、こういった甘い囁きをしたわけだ。<われわれはこの事件に深い関心を持っている。カルト宗教による殺人事件として、われわれも捜査をしている最中なのだ。カルト宗教による事件の被害者の子息であるあなたには、深い同情を禁じえない。>とね。実の両親と離れて暮らした<狭霧しをん>は、剣術は教えられているが、魔術とは無縁の世界に生きてきた。そのため、魔術に関して、いかがわしい世界であると毛嫌いする潔癖さを持っていた。だから、その点を突いたのだ。どうだ、いかしてるだろう。いいか、今後のために言っておくが、催眠状態での洗脳は、被験者の中の隠された欲求に沿うものでないといけない。被験者がまったく望まないものを、欲望させることはできないんだ。日ごろから大衆心理を読み、ここまでのし上がってきたポピュリズムの天才だからこそ、なし得た洗脳なのだよ。だから、<狭霧しをん>は<ゾンビ戦隊デンジャラス>だけでなく、<狭霧sion>を必ず斬る。少なくとも<狭霧しをん>がマスターしている剣術は、<狭霧一族>直伝のものだからね。<狭霧sion>と互角に戦えるはずだよ。うひっひっひ。」
# by rhizome_1 | 2005-06-01 21:40 | 創作

空の饗宴(30)

不意に黒い雫がほおにかかる。
「なんだ。<与太郎>。きものにかかるじゃないか。このきもの、高いんだぞ。」
<しをん>は相当怒っているとみえて、すでに日本刀の先は、天を引き裂いていた。
「画用紙に、黒の水彩絵の具なんか垂らして、しかも天井まで水道を引っ張るなんて!子供だましも、いい加減にしろ!お前の妄想世界にヤラれてしまった人間は、この雫を放射能雨と思うだろうが、しょせん、ニセものにすぎん。お前の部屋には、絵の具の類いはあっても、放射性物質なんてないのだからな。ただ、<くらやみ男爵>から魔力を得ているお前の妄想世界は、これをホンモノと認識した人間には、ホンモノと同じだけの効果があるようになっているというわけだ。簡単にいえば、単なるビタミン剤でも、いろいろ効くといって渡すと、なんか効くようにかんじるプラシーボ効果ってのがあるが、あれを一万倍したようなものだ。だがな、<与太郎>。なんか、計算ちがいをしてないか。」
<しをん>は、あごで前方の<sion>を見るように促す。
前方では、黒い雨を受けて、ピチピチチャプチャプランランランランをやっているゴスロリの女の子がいる。女の子は、黒い水たまりに、ジャンプして、飛び跳ねる雫が、ゾンビ戦隊の連中にかかるのを楽しんでいる。
「な、なんと」
<与太郎>の目がどきもを抜かれたように、見開いている。
「放射能雨の怖さを知っている人間には、<くらやみ男爵>の邪悪な力で、ホンモノの放射能障害が出る。甲状腺が腫れ、リンパ節が痛み、高熱が出て、やがて傷を負うと出血が止まらなくなり、全身に悪性腫瘍が出来てゆく。しかし、アレのように、幼いころから魔術修行に明け暮れ、まともな科学知識を学んだこともないトンデモには、お前の常識は通用しない。単なる黒い水以外のなにものでもないってことさ。また、このカラクリを見抜いてしまい、どうみてもニセモノの舞台設定としか見えない鋭敏な私にも、お前の策略は通用しない。これまた、単なる黒い水以外のなにものでもないってことさ。」
きものを汚されそうになった<しをん>は、先ほどから相当怒っていて、目の前にしたデンジャラス・レッドを蹴散らしていた。
「そこの<コイケ・エイコ>、図体がでかいんだよ。邪魔だ。ドケ!」
続いて、デンジャラス・パープルである。
「なんだ、<カバ>か。こっちに来るな。気持ち悪いんだよ。邪魔だ。たたっ斬るぞ!ボケ!」
「あんた、気持ち悪いなんて、失礼ね!」
デンジャラス・パープルが強烈な安物の香水の匂いをさせながら、近寄ってきた。
「<カバ>とか、<カバ先生>とか、ウザいんだよ!」
ちなみに、<カバ先生>とは笠井潔という作家のニックネームらしいが、判る人にしか判らない名前であると思う。
<しをん>の日本刀は、デンジャラス・パープルを刎ねた。
「馬鹿だね。あたしたち、ゾンビ戦隊だから、そんなことしても、首が生えてくるのよ」
レッドが近寄ってきたが、<しをん>はせせら笑った。
「残念だ。さっき、ここに来るとき<与太郎センセ>の部屋のフィギュアをなぎ倒してきたからね。すでに、お前たちの原型は、壊れてしまっている。お前の顔のパーツも、すでにないんだよ!」
<しをん>の日本刀は、レッドを斬りおとした。
「次は<ニジュウヨジカン、タタカエマスカ?>か!」
デンジャラス・イエローの眼に、<しをん>に対する勝算の数字が表示されている。<コイツは、すでに人間じゃないな>と<しをん>は思う。企業戦士という機械なのである。
デンジャラス・イエローは、放射状に延びた複数の刃物を手にしていた。そして彼は、刃物を回転させ始めた。
「愛用の髭剃りの大きいのを、特注でつくってもらったんでね。」
それを持つイエローの手首は、腕との間に切れ目があり、手首がモーターのように回転している。
どうやら、歯ごたえのある敵のようだ。
<しをん>は、構えの姿勢をとった。
# by rhizome_1 | 2005-05-19 15:42 | 創作

空の饗宴(29)

「そこまでだな。」
不意に日本刀がつきつけられる。
眼を閉じて、ゾンビ戦隊デンジャラスと<sion>の戦いに意識を集中させていた<与太郎>の首元には、日本刀の刃が接触している。
気がつけば、和服の女性がそこに立っている。
「<sion>、なぜ、そこにいる!」
<与太郎>は、驚愕を隠せない。
暗い目をしたその女性が、かすかに微笑んだ。身も凍るような冷たい笑みだった。
「あいにく、私は<sion>じゃない。私の名は<しをん>。<sion>は、私の双子の妹だ。」
「な、なに。双子の片割れだと……。それで、お前は助けに来たというのか。」
<しをん>は、それには答えず、<与太郎>を振り払うと、部屋の奥にずかずかと入り込んだ。
「それにしても、ヲタだな。虫唾が走る。」
<与太郎>の部屋には、等身大のフィギュアが並んでいる。
「この顔は<コイケ・エイコ>。これがデンジャラス・レッドのプロトタイプか!ふん、くだらん。」
<しをん>は、<与太郎>の部屋にあった等身大のフィギュアをなぎ倒してゆく。
「なにをするか。オレ流のゲージツに対して。」
フィギュアの腕が折れ、<与太郎>は泣きそうな顔をしている。
<与太郎>は、<しをん>を止めようとしたが、再び<しをん>から日本刀が繰り出され、<与太郎>の3ミリ手前で止まった。
「なにもできない無力なオタのくせに、止めようとするのか。お前が出る幕など、10年早いぞ。」
部屋の奥にあったのは、ぶよぶよとした赤い玉であった。それは人間が二、三人入れるほどの大きさをしていた。
ぶよぶよとした赤い玉は、呼吸しているのか、玉の表面の産毛のようなものが、かすかに動いていた。
「こいつか。ヲタの妄想空間は。こんなろくでもないものを、実体化させたのは<くらやみ男爵>だな。」
<与太郎>の瞳孔が、<くらやみ男爵>の名を聞いて、かすかに輝いた。開かれた真っ黒な瞳孔を覗き込むように、<しをん>は言った。
「少しは反応があるようだな。無論お前は、意識の上では<くらやみ男爵>のことを知らない。だが、無意識の上では、一番良く知っている。お前は、<くらやみ男爵>に催眠状態で操られているピエロに過ぎない。<くらやみ男爵>が、お前を使ってやろうとしたことは、世界をお前の妄想空間に引きずり込み、破滅させることだった。その魔力を使って、だ。だが、お前の役割は終わった。私は、<くらやみ男爵>とお前が世界を破滅させる前に、破滅の妄想を破滅させる。こんなふうにな。」
日本刀がしなやかなカーブを描いて、赤い玉を斬った。
玉の中から、赤い闇があふれ出た。
「<くらやみ男爵>の魔力の秘密は、あるはずのないものが、あるかのごとく信じさせることだった。お前のつくった妄想空間を実体化させるために、お前自身に、これが実在するものだという信憑を植えつけた。いいか、お前は食い物にされていたんだぞ。お前の魂の力は、すでに枯渇している。これを、現実化させるために、<くらやみ男爵>はお前の魂の中の生命力を、吸血鬼のように吸い取ったのだ。この赤い闇は、お前の心の世界だ。」
そういって、<しをん>は、赤い闇の世界に踏み入れていった。
# by rhizome_1 | 2005-05-16 00:00 | 創作